当院では、入院中に起こりうる「医療関連感染」を継続的に監視(サーベイランス)し、その結果をもとに感染対策を見直しています。ここでは、集中治療室(ICU)・一般病棟における医療器具に関連した感染と、手術部位の感染について、2023年から2025年までの結果を公開します。
点滴用の太い管(中心静脈カテーテル)、人工呼吸器、尿道留置カテーテルなどの医療器具は治療に欠かせませんが、体の外と内をつなぐため、感染の入口になることがあります。感染率は「器具を使った日数1,000日あたりに何件の感染が起きたか」で表します。
使用比 入院患者さんの延べ日数のうち、カテーテルや人工呼吸器を使っていた日数の割合です。ICU では高く、一般病棟では低くなるのが通常です。
感染率 器具使用 1,000 日あたりの感染件数です。カテーテルや人工呼吸器の使用日数が少ない病棟では 1 件の発生で数値が大きく動くため、複数年の推移で見ることが大切です。
首や鎖骨の下などから心臓近くの太い血管に入れる「中心静脈カテーテル」を介して、血液中に細菌が入る感染です。栄養や薬剤の投与に必要な一方、最も注意が必要な医療器具関連感染のひとつです。当院では ICU で 2006 年度から、一般病棟でも 2023 年から監視しています。
一般病棟では中心静脈カテーテルの使用が少ないため、感染率は少数の症例で大きく変動します。推移の傾向を重視してご覧ください。
人工呼吸器を使っている患者さんで、一度安定した呼吸状態が悪化した出来事を段階的にとらえる指標です。
VAC(呼吸状態の悪化)→ IVAC(そのうち感染が疑われ抗菌薬が始まったもの)→ PVAP(そのうち肺炎の可能性があるもの)の順に絞り込まれます。VAC には肺炎以外の原因(肺に水がたまる、無気肺など)も含まれるため、VAC の発生が高いことが直ちに「感染が多い」ことを意味するわけではありません。
2025年の VAC について VAC の発生件数は例年と同程度でしたが、人工呼吸器の使用日数が減少したため、1,000 日あたりの発生率が高く算出されています。
一般病棟での人工呼吸器使用はごくわずか(使用比 0.01 未満)で、IVAC・PVAP は 3 年間発生していません。
尿を出すために膀胱に入れる管(尿道留置カテーテル)を介して起こる尿路感染です。入院中に最も多く使われる器具のひとつで、「必要なくなったらできるだけ早く抜く」ことが最大の予防策です。当院では 2022 年から全病棟で監視しています。
手術をした傷やその周りに細菌が入り込み、感染を起こすことがあります。このように手術をした部位に起こる感染です。当院では全国サーベイランス(厚生労働省 JANIS SSI 部門)に参加し、対象手術ごとに発生率を集計しています。
発生率は「手術件数のうち SSI が起きた割合(%)」です。手術の種類ごとに起こりやすさが大きく異なるため、種類別に示しています。
各セル:手術件数/SSI件数/発生率(%)
手術件数が年間数十件の手技では、1 件の発生で発生率が数%変動します。年ごとの上下よりも、複数年を通した水準でご覧ください。
当院では、医療関連感染の発生状況を継続的に把握するとともに、感染予防策の実施状況を評価し、感染対策の質の向上につなげることを目的として、医療関連感染サーベイランスを実施しています。
術式別の発生状況や起因菌、発生時期、関連するリスク因子などを把握・分析し、感染発生事例から診療科や関連部門とともに改善すべき点を検討しています。
中心静脈カテーテル、人工呼吸器、尿道留置カテーテルについては、感染の発生状況だけでなく、挿入時の感染予防策、適切な管理、毎日の必要性評価や早期抜去などについて、ケアバンドル(複数の予防策をまとめて確実に行う方法)を用いて実施状況を評価しています。
サーベイランスサポートチームを発足し、サーベイランスで得られた情報をもとに、多職種で原因分析や介入を行い、改善策の検討・実施につなげています。
サーベイランスの結果は院内へフィードバックし、感染予防策の実施状況や課題を共有するとともに、各部署と連携して必要な改善策を実施し、その効果を評価することで、継続的な感染対策の改善につなげています。